FXの自動売買(EA)で利益を出すポイント
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- 1. まずはバックテスト(過去検証)の成績を確認しよう
- - 長期間にわたって成績が右肩上がり
- - 勝率やリスクリワード比率が極端なものは避ける
- - 最大ドローダウンに対する利益の大きさに注目
- 2. フォワードテスト(実運用)でも利益が出ているものを選ぶ
- - バックテストだけではEAの真の実力はわからない
- - 最低でも3~6か月程度の計測はしたい
- - バックテストと同程度の成績を再現できている
- 3. 運用を開始した後の注意点
- - 無理のないロット設定で動かそう
- - 目先の結果に一喜一憂せず、長期で成績を捉える
- - 稼働停止のタイミングは決めておこう
- 4. それ以外のポイント
- - しっかり損切りするシステム(EA)を使う
- - 複数のEAでポートフォリオを組むコツ
- - 証券会社ごとの成績の差にも注目
まずはバックテスト(過去検証)の成績を確認しよう
バックテストは、そのEAの過去の成績や特徴がひと目で把握できるため、EAの性能を評価する上で必要不可欠です。具体的には、次のような点に注目します。
長期間にわたって成績が右肩上がり
バックテストの成績グラフを見るときは、収益の推移だけでなく、ドローダウンの大きさや、取引回数にも注目してみてください。
グラフが右上がりであれば良好なパフォーマンスを示しますが、大きなドローダウンがあったり収益が不安定な場合はリスクが高いことを意味します。
どの期間でも安定して利益を出しているか、成績が停滞している期間が長すぎないかを確認しておきましょう。
勝率やリスクリワード比率が極端なものは避ける
FXの自動売買を行う際、極端な勝率やリスクリワード比率(損失と利益の比率)を持つ戦略は、
一見すると成績が非常に安定していて魅力的に見えるかもしれませんが、実際には、見落としやすい多くの欠点があります。
非常に高い勝率の戦略は、小さな利益を頻繁に得ることに焦点を当てている場合が多く、一度の大きな損失でそれまでの利益を失うリスクがあります。
不適切なリスクリワード比率、特に損失が利益を大幅に上回る戦略は、長期的に持続可能でないことが多いです。
だからといって、大きな損切りに備えてロットを小さく設定すると利益を出しづらくなるというジレンマをかかえています。
ごくまれに大きな損切りになるような手法は、そもそもバックテストの信頼性が低く、リスクの大きさを正確に評価できていない可能性も高いです。
1回のトレードの結果が年単位での収支に大きな影響を与えるため、ロジックやパラメーターの過剰最適化が起こりやすく、実際の運用との成績にズレが生じやすい傾向があります。
最大ドローダウンに対する利益の大きさに注目
FXの自動売買を選ぶ際、最大ドローダウンに対する利益の比率(リカバリーファクター)にも注目しましょう。
高いリカバリーファクターは、小さなドローダウンから大きな利益を生み出す能力があることを意味するため、同じ資金量でより大きなリターンを得られる可能性が高いといえます。
一見すると、純利益の金額が大きいEAのほうが優れているように思えますが、実際にはEAによって初期証拠金、ロット設定、ポジション数、最大ドローダウンの金額は異なるため、真の収益力を見抜くのは簡単ではありません。
そこで、このリカバリーファクターを利用することで、設定の異なるEAであっても同じ基準で比較しやすくなります。
EAのロット設定を行う際には、過去の最大ドローダウンを参考にするのが一般的です。
例えば証拠金のうちの半分は失って良いと考えるなら、最大ドローダウンが証拠金の半分になるようにロットを設定します。
この計算方法を使う場合、最大ドローダウンが小さいほど大きなロットを設定できるため、リカバリーファクターが極めて重要になります。
フォワードテスト(実運用)でも利益が出ているものを選ぶ
フォワードテストとは、EA開発後の相場における実際の成績です。
実運用でも本当に勝てるかどうかを確認できるので、必ず目を通しましょう。
バックテストだけではEAの真の実力はわからない
バックテストだけではEAの性能を十分に評価できません。
バックテストは過去のデータに基づいて行われますが、市場環境は常に変化するため、未来の相場においても同じように利益を出せるという保証はないからです。
バックテストではスプレッドの変動、スリッページ、発注速度などの実際のFXの取引環境を完全に再現できないため、実運用でのパフォーマンスとは異なる結果となる可能性があります。
さらに、特定の過去のデータに過剰に最適化された戦略は、新しい未知のデータに対して脆弱であることが多く、フォワードテストではバックテストと比較してパフォーマンスが落ちることも珍しくありません。
最低でも3~6か月程度の計測はしたい
フォワードテストに必要な期間は少なくとも3か月から6か月です。
さまざまな相場やイベントを通じて、十分な取引回数をこなすための期間と考えましょう。
取引回数はEAによっても異なるので、取引頻度が低いものは性能の評価により長い期間が必要になってきます。
短期間ではEAの真の性能を十分に理解することが難しく、偶然の結果に基づいた評価になりがちです。
3か月以上のテストを行うことで、トレンド市場やレンジ市場、高ボラティリティなど、さまざまな市場環境下での戦略の反応を観察することができます。
また、季節による市場の変動も考慮に入れることができるため、より信頼性の高い結果を得ることが可能です。
バックテストと同程度の成績を再現できている
EAの再現性を確認する際は、フォワードテストとバックテストの成績が近いことが重要です。
この理由は、バックテストの成績が過去のデータに基づいているため、将来のFX相場の動向を正確に予測できるとは限らないからです。
一方、フォワードテストは実際の市場環境でEAを試すことにより、より現実的なパフォーマンスを測定します。
両者の成績が近い場合、EAが過去のデータだけでなく、現在及び将来の市場環境においても安定したパフォーマンスを発揮する可能性が高いと判断できます。
これは、EAが過剰適合(オーバーフィッティング)していないこと、そして実際の取引で予想されるパフォーマンスをより正確に反映していることを意味します。
運用を開始した後の注意点
実際に自分でEAを動かすときにも、注意すべき点がいくつか存在します。安定して利益を出すためには以下のような点を心がけると良いでしょう。
無理のないロット設定で動かそう
自動売買に限らず、FXでは早く利益を出そうと思って、ついつい大きなロットで取引をしてしまいがちです。
しかし実際には、控えめなロット設定で長期間運用し続けることが、大きな損失を避けて安定した利益を得るために重要なポイントです。
大きすぎるロット設定の問題点は、短期的な不調によって資金を大きく減らしてしまったり、破産する危険性が上がることです。
EAの稼働開始直後に大きなドローダウンが起こった場合、システムを稼働し続けることへの不安や疑問から、ロットサイズを小さくしてしまったり、運用を停止してしまい、その後の利益を逃してしまう可能性があります。
ロットサイズの決定方法としては、取引に割り当てるリスクの割合を事前に定め、そのリスク許容範囲内でロットサイズを計算することが一般的です。
例えば、バックテストにおける最大ドローダウンが、資金の15%になるようにロットサイズを計算する、などです。
目先の結果に一喜一憂せず、長期で成績を捉える
MT4で自動売買を行う際、短期的な成績に一喜一憂せず、長期的な視点で成績を捉えることが重要になります。
ある手法がバックテストどおりの勝率や期待値に収束するためには、多くの試行回数が必要です。
取引回数が10~20回程度では、本来の成績よりも上振れたり下振れたりするのが普通なので、長い目で成績を見守りましょう。
年単位ではプラスであっても、月単位ではプラスとマイナスの月が両方あるのが普通です。
成績が停滞している期間が長く続くときは、バックテストにおいてどの程度の停滞期間が起こっていたかを参考にしてみると良いでしょう。
あまりに停滞期間が長い(例えば1年以上ある)手法は、そもそもバックテストの段階で採用を見送るほうが賢明です。
稼働停止のタイミングは決めておこう
MT4で自動売買を行う際には、稼働停止のタイミングを事前に決めておくことが重要です。
稼働停止のルールには、以下のようなものがあります。
- 最大ドローダウンを超えた時
実運用における最大ドローダウンがバックテストの結果を超えたときは、想定を超える損失が出ていることを意味するため、稼働停止の目安となります。ただし最大ドローダウンの金額は、ロット設定やバックテストの期間によって変動するため注意が必要です。
- 指標発表やニュース
特定の経済指標の発表や政治的なイベントなど、市場が不安定になりそうな時は自動売買を一時停止することが賢明です。なかでもスキャルピングなどの小さい値幅を狙うタイプのEAは、スプレッドやスリッページの影響を受けやすいため、稼働を停止しておいたほうが良いでしょう。
- システムの不具合
システムやインターネット接続に問題がある場合も、自動売買を停止するべきです。システムの不具合が原因で意図しない取引を行ってしまうリスクを避けるためです。
これらのルールを設定し、運用しておくことで、リスク管理を強化し、資産を守ることが可能になります。
FXの自動売買は便利なツールですが、市場の変動やシステムの問題に対しても柔軟に対応できるように準備をしておくことが大切です。
それ以外のポイント
バックテストやフォワードテスト、実際の運用における注意点のほかに、FXの自動売買を運用して利益を出すために覚えておきたいポイントを解説します。。
しっかり損切りするシステム(EA)を使う
裁量だけでなく自動売買においても、損切りは資金管理とリスク管理の観点から極めて重要です。
FXではごくまれに非常に強いトレンドや暴落が発生するため、あらかじめ損切りを入れてリスクを限定しておくことは資金を守る上で非常に大切です。
一回あたりの損切りが大きすぎる手法は、成績のムラが激しくなりやすく、過剰最適化の原因にもなりかねません。
こまめに損切りと利益確定を繰り返しながら、長期的に利益を積み上げていくEAが理想的です。
くわえて、損切りは心理的な負担を軽減させる効果もあります。
取引が不利に進んでも、あらかじめ設定した損失額以上を失うことはないため、取引結果に一喜一憂したり、ロット設定をむやみに変更するのを防ぐメリットがあります。
複数のEAでポートフォリオを組むコツ
複数のEAを組み合わせて使うことで、それぞれの手法の短期的な好調不調の波が小さくなり、より安定して利益を得られるようになります。
ポートフォリオを組む際は、まず異なる通貨ペアに対応するEAを組み合わせて、一つの通貨ペアの変動がポートフォリオ全体に与える影響を軽減しましょう。
次に、トレンドフォロー型、レンジ型、ブレイクアウト型など、異なる取引戦略を採用したEAを選ぶことで、様々な相場で利益を出せるようになります。
一つのEAが資金全体に大きな影響を与えないようにロットを調整することで、ポートフォリオの安定性が高くなります。
ポートフォリオを構築したあとは、定期的にパフォーマンスを評価し、必要に応じてEAの組み合わせを変更していけば完璧です。
証券会社ごとの成績の差にも注目
MT4でFXの自動売買を行う際、証券会社ごとにパフォーマンスに差が出る主な理由は、取引条件の違いにあります。
注目すべき観点としては以下の項目があります。
- スプレッド
狭いスプレッドは取引コストを下げ、利益率を高めます。特に短期取引では、スプレッドの影響が大きくなります。
- スワップポイント
同じ通貨ペアであっても、証券会社によってスワップポイントの設定は異なります。スイングトレード以上で長期間ポジションを保有する場合に重要です。
- 注文の速度
高速な注文実行は、指定した価格での取引がスムーズになり、スリッページを減少させます。自動売買では、注文の即時実行が重要です。
これらの要素を比較することで、自分の取引戦略に最適な証券会社を選択し、MT4での自動売買のパフォーマンスを最大化することができます。
定期的にこれらの条件を見直し、最適な取引環境を維持することが重要です。
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