AMSER開発者林貴晴氏が教える|第1話:自動売買について
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自動売買システムについて
自動売買システムとは、取引を自動で行うプログラムです。
先物、株式、仮想通貨といった様々な市場において活用されていますが、
特に外国為替(FX)市場は理想的です。
外国為替市場は高い流動性と24時間取引が可能であるため、自動売買システムに適しています。
自動売買システムは24時間市場を監視し続けることができるため、投資家は市場の動向を常に追いかける必要がなくなります。
これにより、他の作業や活動に時間を割り当てることが可能です。
また、人間が24時間監視するためにかかる大きなコストと比べ、プログラムソフトウェア、数万円程度のコンピューター、通信料、あるいはVPSのわずかな費用で運用が可能です。
さらに、感情を排除し計画通りの戦略をミスなく実行できるため、心理的にプレッシャーが大きくなる場面、
例えば投資金額が大きくなるような状況で自動売買システムの利点が顕著になります。
さらに、自動売買システムは、何百万ものデータを用いたバックテストが容易に行えるため、戦略ロジックをしっかり検証することが可能です。
自動売買システムは、人間には困難な、複数の市場での同時取引や、複数のロジックを用いた取引を実行する能力を持っています。
外国為替(FX)の自動売買の戦略
外国為替(FX)で用いられる自動売買システムのアルゴリズムや基本戦略は、その詳細が一般に公開されることが少なく、情報入手が難しいです。
本稿では、公開されることがほとんど無い自動売買システムのメカニズム、その利点と注意点について詳しく紹介します。
トレンドフォロー戦略
トレンドフォロー戦略は、市場のトレンド(価格が一定方向に動く傾向)を識別し、それを追従する取引を行う方法です。
この手法は1920年代にリチャード・ワイコフによって確立された古典的なもので、今日でも広く使用されています。
トレンドの識別にはエンベロープ、ドンチャン、ボリンジャーバンドのようなインジケーターを使用し特定のレベルを超えた場合や、
MACDやRSIのようなオシレーター、移動平均線を使用する方法などがあります。
トレンドフォローで重要なのは利益確定(利確)と損失制限(損切り)の設定です。
予想と反対に動いた際は迅速にポジションを閉じる必要があります。
トレーリングストップを用いた利確は効果的な方法のひとつです。
一般的にトレンドフォローのEAは低勝率ですが損小利大の傾向にあり、取引頻度が多いトレンドフォロー自動売買システムは、メンタル面での負担を軽減するのに役立ちます。
平均回帰戦略
平均回帰戦略は、価格が大きく乖離した後、平均値に戻る統計的特性を利用する投資戦略です。
この概念は1870年代にフランシス・ゴルトンが提唱したもので、移動平均線から一定以上乖離した価格は戻るという考えに基づいています。
この考え方は多くのオシレーターとして使用されるインジケーターの基礎となっており、トレンドフォロー戦略と平均回帰戦略の両方として使用できるインジケーターは多々あります。
自動売買システムでの平均回帰利用は高勝率になる傾向がありますが、稀に大きな損失を出すことがあります。
特に市場活性が高く価格が戻らない時に大きな損失が発生するため、市場の活性度を予測することが非常に重要です。
グリッドトレード
グリッドトレードは、市場価格が上昇や下降を繰り返すことを利用した取引戦略で、定められた価格間隔(グリッド)に買い注文や売り注文を配置し、自動で取引を行います。
この方法は特に価格が一定の範囲内で上下を繰り返すレンジ相場や特定の方向に動くトレンドに効果的です。
価格が予測と逆に大きく動くと、未決済のポジションが増え、含み損が拡大するリスクがあります。
両建てすることも可能ですが、スワップポイントを取得する方法にのみトレードすることで、未決済のポジションはスワップポイントの獲得という副次的な利益を提供します。
グリッドトレードは適切な資金管理を行うことで、理論上は損失を回避します。資金効率は低くなる傾向にあります。
時間的戦略
時間的戦略は、金融市場で発生する特定の時間帯の動きやパターンを利用する取引戦略です。
この戦略では、世界各地の主要な市場—東京、シンガポール・香港、ロンドン、フランクフルト、ニューヨーク—が開始、終了する直前直後の動き、
東京市場の仲値前後の為替レート変動、東京ランチタイムの低ボラティリティ、指標発表時やロンドンフィックス時の高ボラティリティなど、
特徴的な時間帯に注目します。
これらの時間には、予測可能な価格の変動がしばしば発生するため、それを利用した戦略を展開することが可能です。
戦略の成功は、これら特定の時間帯の市場の挙動を理解し、適切な取引をタイミング良く実行することです。
アービトラージ
アービトラージは、価格の不均衡を利用してリスクが少ないまたは無い状態で利益を得る取引戦略です。
具体的には、異なる市場や異なる金融商品間で同一資産の価格に差がある場合、低価格で資産を購入し、高価格で同時に売却することで差額から利益を得ます。
この戦略には、三角アービトラージ(三つの異なる通貨ペア間の為替レートの不一致を利用)、
レーテンシーアービトラージ(異なる市場や取引所間の価格情報の伝達遅延を利用)、
スワップアービトラージ(スワップの差や配布日の違いを利用)などがあります。
アービトラージは市場の効率性を高める役割を果たすため、多くの場合奨励されていますが、市場の公平性を損ねる可能性のある手法には規制が設けられることがあります。
また、一部のブローカーでは使用が禁止されている場合があるため、取引前に確認が必要です。
ロットコントロール手法
ロットコントロールはFX取引をはじめとする金融取引において、投資のリスクを管理し、利益を最大化するための重要な戦略です。
ロットコントロール戦略には、以下のような手法が含まれます:
複利戦略(マネーマネージメント)
投資資金に基づきロット数を増減します。
連勝時には資産が急増し、連敗時には緩やかに資金が減少する効果があります。
マーチンゲール戦略
損失額の2倍のロットを次の取引で使用し、一度の勝利で過去の損失を回復する可能性がありますが、ロット数が急激に増えるため、破綻のリスクが高まります。
パーレー法(ピラミッティング)
前回の投資額と利益額の合計を次回の取引に再投資します。
連勝すると資産が指数関数的に増加しますが、一度の敗北で全てを失うリスクがあります。
ココモ法
過去二回の損失額を次回のエントリーに使用し、損失を回復しようとします。
モンテカルロ法(キャンセルシステム)
カラムを想定しロットをコントロールすることで、投資資金が過剰に増えないように管理します。
ウィナーズ投資法
特定のルールに基づいて資金を投入します。投資資金の増加は穏やかですが、ワンセットが長くなることがあります。
FXの損益は取引ごとに異なるため、これらのロットコントロール手法を適切に計算し適用することが重要です。
自動売買システムでは、これらの戦略をプログラムし、リスクを自動で管理しながら効率的に取引を行うことができるため、相性が非常に良いとされています。
今回は自動売買システムの基本的な概念、一般には公開されていないアルゴリズムや戦略、さまざまな取引手法について簡単に紹介しました。
これらの情報が、皆様の投資戦略の参考となり、より効果的な取引の実現に役立てばと思います。
執筆者紹介
AMSER株式会社 代表取締役
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