経費から考えるトレーダーの納税と節税
公開日:トレードである程度の収益を生み出せるようになった時、絶対に忘れてはならないのが納税です。
納税にまつわるあれこれについて考えを巡らす必要が出てきてこそ勝ち組トレーダーであるとも言えますが、とは言え申告の手間や経費の計算など、面倒なことも多いですよね。
FX自動売買での収益をどのように申告すればいいのか、申告する際に何が経費として計上できるのかなど、初めて申告する方にとってはわからないことだらけかもしれません。
そこで今回は、納税の基準や税額を下げるための方法などについてお話したいと思います。すでに納税を行っている方も、経費を見直す際などに役立てていただけますと幸いです。
申告が必要なトレーダーとは
繰り返しになりますが、FX自動売買で収益が上がったら納税が必要です。ただし納税には条件があり、収益が一定の金額を下回る方の場合は申告する必要がありません。
申告が必要になるのは、
FXでの年間所得額が20万円
(FX以外の所得が一切無い方の場合は48万円)
この金額を超えた方のみです。
また、国内FXと海外FXでは確定申告内の「勘定科目」が異なります。
国内FXの年間利益は「先物取引に係る雑所得等」に該当するため、「申告分離課税」扱いとなります。
これは他の所得とは合算せず、FXでの所得に対して独自の税率や計算式を用いて課税する方法です。
一方、海外FXでの年間利益は「雑所得等」に該当するため、「総合課税」扱いとなります。
2つの大きな違いは税率です。2024年6月現在、申告分離税の税率は20.315%。総合課税の税率は累進課税方式で決められるため、課税所得によってそれぞれ異なります。
税額を下げる方法
税額を計算するうえでベースの金額となるのが「課税所得」。これは「FX自動売買の運用益から経費を引いたもの」とイコールです。
ということは、経費を漏らすことなくきっちり計上することができれば、そのぶん年間所得額も上がるわけです。
つまり、経費にできるものや申告するうえでのルール、税法などをしっかりと把握しておくことが重要なのです。
では税額を下げる方法として、具体的にどんなものがあるのでしょうか。以下で説明します。
経費を申告する
FX運用における「経費」とは、「収益を上げるために必要なものに対して支出した金額」です。
仮に国内FXで100万円の収益をあげたとします。この場合、税率は20.315%ですので納税額は約20万円です。
しかし、申告の際に10万円の経費を計上すると、収益額の100万円から経費を差し引いた90万円に対して税がかかることになるため、納税額は90万円の20.315%=約18万円。
経費の申告を行わなかった時よりも、納税額は2万円ほど下がるのです。
では経費として計上できるものにはどういったものがあるのかご存知でしょうか?
以下に代表的なものをまとめてみました。
- インジケーター、EAの購入費
- VPSの月額費や年額費
- セミナーや懇親会の参加費および会場までの交通費
- FX関連の書籍代
- FX専用で使用しているPCの購入費(10万円以上で減価償却の対象)
- トレードルームとして借りている場所の賃料(地代家賃)
これらのすべてが経費として計上できます。
「これは経費にならないだろう」という思い込みからうっかり申告し忘れている方も多いと思いますので、上記の一覧を参照して漏れているものがないか確認してみましょう。
ちなみに経費を申告しなかった場合、実際に支出があった経費であっても無かったものとみなされてしまいます。
そのため、
- 経費は必ず算出して申告の際に記載すること
- 領収書などは調査が入った際に必要となるため証跡を残しておくこと
(確定申告の際に提出する義務はありません)
この2点は徹底しておきたいものです。
損失繰越を行う
年間収支がマイナスの場合、国内FXに限り赤字を3年間繰り越すことができるというルールがあります。
この赤字の繰越は、FX自動売買の運用益より経費の支出額が大きい場合にも行うことが可能です。いわゆる「損失繰越」です。
例えば今年2024年にマイナス100万円の赤字を出したとしましょう。この赤字は翌年の2025年・翌々年の2026年まで繰り越すことができます。
仮に2025年の収支がプラス60万円だったとしても2024、25年の2年間通しての収支はマイナス40万円。そのため、2025年はFX収益額に対する納税の必要がなくなります。赤字が相殺されるまでは、納税の必要はないというわけです。
注意点としては、これを行えるのは青色申告の場合のみであること。そして「雑所得」には適用されないことです。
赤字の繰越を行う際は、確定申告書内の「繰越損失」欄に赤字となっている金額を記載します。
法人を設立する
ある程度の収益が見えてきた方には、法人を立ち上げるという選択肢もあります。
法人を立ち上げれば経費の幅も広げられますし、会社全体の経費もあわせて収支を調整することもできます。
さらに国内の証券外会社では個人口座の場合最大25倍と規制されているレバレッジですが、法人口座であればそれ以上のレバレッジで取引を行えることもあります。
もちろんその分リスクも高くなりますが、少ない資金で取引量を増やせるのはメリットであると言えるでしょう。また、先程お話しした損失繰越についても、個人の場合であれば期限は3年ですが、法人の場合は10年です。
ただ、法人の場合実行税率が約33%。個人での税率よりも約13%も高いです。
法人の立ち上げを検討する際は税率を含めたさまざまな点を考慮して、自身にとってどちらのメリットが大きいかを判断する必要があります。
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