国内FXと海外FXの税制の違い
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国内FXと海外FXでは利益に対しての課税方式が異なることは前回記事でもお伝えしましたが、ではどちらが確定申告を行ううえで得なのでしょうか。
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結論から言うと、これは各々の年間利益やFX以外の収入がいくらあるかによって判断の軸が変わってきます。
自身にとってベストな取引・ベストな申告方法を選び取るための近道は、それぞれの税の仕組みを正しく把握すること。本記事では具体例を挙げながら、国内FXと海外FXそれぞれについて解説します。
国内FXと国外FXの税率
そもそも国内FXと国外FXは、利益に対しての課税方式が異なります。
国内FXでの年間利益は「先物取引に係る雑所得等」に該当するため、「申告分離課税」として扱われます。「申告分離課税」とはその字の通り、一部の所得を他の所得とは合算せず分離して計算した税額を納税する方法です。
2024年7月現在、申告分離課税の税率は所得に対して一律20.315%(所得税15%+住民税5%+復興税0.315%)です。
一方で、海外FXでの年間利益は「雑所得等」に該当するため、「総合課税」として扱われます。
「総合課税」とは、他の所得と合算した所得の合計額から計算した税額を納税する方法。税率は所得金額に応じて7段階に区分されており、累進的に税率が上がるシステムです。
最高税率は所得4000万円以上に適用される45%。これに住民税10%と復興税0.315%が加算されるため、最大税率の場合55.315%が課されることとなります。
※上記の税率に加えて住民税10%と復興税0.315%が追加される
※2024年度版
モデルケースから国内海外それぞれの納税額を考える
ここまでの説明をより具体的なものにするため、モデルケースを挙げて解説してみましょう。
※税率による差を分かりやすく説明するため基礎控除や各種所得控除は除外して算出します
Case1:給与年収500万円、FX年収300万円の場合
FXでの所得が国内FXによる場合
仮にサラリーマンとして勤める企業からの給与所得が500万円、国内FXでの利益所得が300万円とします。
この場合、サラリーマンとしての給与所得に対しては、勤務先企業が年末調整などで税処理を行いますので、実際に自身で申告を行うのはFX所得分のみです。
勤務先からの給与所得の税額は
500万円×(20.315%+住民税10%)=1,515,750円
国内FXでの利益所得に掛かる税額は
300万円×(15.315%+住民税5%)=609,450円
※「先物取引に係る雑所得等」に該当
納税額の合計は2,125,200円です。
FX収入での所得が海外FXによる場合
では、同じく300万円の収入を海外FXで得ていた場合、税額はどうなるのでしょうか。
海外FXの所得についても国内FXで利益を得た時と同様に、自身での確定申告が必要です。ちなみに海外FXであっても、納税は居住している自治体に対して行います。
税率については先程もお伝えした通り、海外FXの利益は「雑所得等」に該当し「総合課税」扱いとなるため、先ほどの図表に所得を当てはめることで割り出せます。
勤務先からの給与所得500万円+海外FXでの利益所得300万円=800万円。
課税所得金額が800万円なので税率は23%、さらに復興税0.315%をあわせると23.315%。
800万円×(23.315%+住民税10%)=2,665,200円
納税額の合計は2,665,200円です。
国内FXでの納税額合計は2,125,200円だったので、この方の場合は国内FXで取引を行った方が納税額を50万円以上も抑えられるようです。
Case2:給与年収80万円、FX年収100万円の場合
FXでの所得が国内FXによる場合
パートとして勤める勤務先からの給与所得が80万円、国内FXでの利益所得が100万円あったとします。
サラリーマンの場合と同じく、パートとしての給与所得に対しても勤務先企業が年末調整などで税処理を行いますので、実際に自身で申告を行うのはFX所得分のみです。
勤務先からの給与所得の税額は
80万円×(5.315%+住民税10%)=122,520円
国内FXでの利益所得に掛かる税額は
100万円×(15.315%+住民税5%)=203,150円
※「先物取引に係る雑所得等」に該当
納税額の合計は325,670円です。
FX収入での所得が海外FXによる場合
では、同じく100万円の収入を海外FXから得ている場合はどうなるのでしょうか。
「総合課税」の税率にを確認してみると、
(勤務先からの給与所得80万円+海外FXでの利益所100万円)=180万円
課税所得金額は180万円なので、税率は5.315%です。
これに住民税10%を加えて計算すると
180万円×(5.315%+住民税10%)=275,670円
納税額の合計は275,670円。
この方の場合は、海外FXの方が5万円ほど納税額を抑えられるようです。
国内FX・海外FXどちらが得かはケースバイケース
例に挙げた通り、国内FXと海外FXのどちらが得かは各々の収入により変わります。
今回は単純に税率でのみ納税額を算出しましたが、実際の確定申告時は控除項目や扶養人数によって控除額が大きく異なります。
だからこそ、税額の計算方法や税率など税に関する知識をつけて自身で試算できることが重要なのです。
自身の知識だけで不安がある場合は、税理士事務所の有料相談などを利用してみることもお勧めです。
質問に対して明確な回答を貰えますし、確定申告時の勉強にもなります。
ちなみに前回記事でお伝えした経費に関しては、国内FX・海外FXいずれであっても適用できます。
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税金のルールは毎年変化していくため、正しい知識を付けて毎年ケースバイケースで対応していく事が税金をうまくコントロールするコツです。
毎年12月に税制改正大綱で翌年の税制が発表されますので、注目してみてはいかがでしょうか。
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