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AMSER開発者林貴晴氏が教える|第9話:仲値(ドル円のターニングポイント)

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為替市場では、一日の中で平均的な変動パターンがあります。

一般的に、各国の市場が開いている時間帯には、その国の通貨が上昇する傾向があります。

例えば、東京市場の時間帯には円が強くなり、英国や欧州の市場が開いている時間にはポンドやユーロが上昇します。同様に、ニューヨーク市場の時間帯にはドルが強くなる傾向が見られます。

 

しかし、東京市場の仲値が決定される日本時間9:55には、特殊な動きが観察されます。

この時間に向かって円安ドル高が進行しますが、9:55を過ぎると状況は一変します。

急激に反転し、円高ドル安へと転じるのです。このため、9:55はトレンドのターニングポイントとして注目され、戦略を立てる上で考慮すべき要素の一つとなっています。

仲値

仲値とはAsk(買値)とBid(売値)の中間の価格を指します。

為替市場では特に、毎日午前955分に銀行が決定する為替レートを指すことがあります。

 

この時間の仲値は、特に輸入産業にとって非常に重要な意味を持ちます。

輸入産業では、海外からの商品仕入れに伴う支払い日があらかじめ決まっているため、955分の仲値を基準にして円をドルに両替し、支払いを行うからです。

 

一方、輸出産業にとって仲値の影響はそれほど大きくありません。

輸出業者は、商品を海外に出荷する際、受け取ったドルを円に両替する必要がありますが、この両替のタイミングは自由が利くため月末などの締め日に合わせて行うことが多く、特定の時間のレートに依存することはありません。

そのため、輸出業者は955分の仲値よりも、その時々の為替相場の動向を見ながら有利なタイミングで両替を行うことができます。

 

仲値は午前955分に決定されますが、その直前と直後に為替市場で円安ドル高から円高ドル安へと急激に動く傾向がみられます。

これにはいくつかの理由があります。

 

まず、輸入業者が仲値を利用して支払いを行うため、仲値直前の時間帯には円を売ってドルを買う動きが活発になります。

輸入業者は、事前に必要なドルを確保するために円を大量に売るため、この時間帯には円安ドル高が進行します。

この取引の集中によって、円の価値が下がりドルの価値が上がる現象が起こるのです。

 

午前955分に仲値が決定されると、これらの取引は一旦落ち着きます。

しかし、その後すぐに市場は逆の動きに転じます。

これは、仲値が決定された後、輸入業者が取引を完了し、円を売る圧力が一段落するためです。

さらに、輸出業者や投資家が仲値後の円安を利用して利益を確定しようとするため、円を買い戻す動きが強まります。

これにより、円高ドル安の方向に急激に動くことがあります。

 

また、投機筋の動きも影響しています。トレーダーは、仲値前後の価格変動を利用して短期的な利益を狙うことが多く、このために市場に大きな注文を入れることがあります。

これが、為替レートの急激な変動をさらに助長する要因となります。

仲値に関するアノマリー

為替市場では、日本時間の午前955分に決定される仲値を中心に興味深い現象が観察されます。

一般的に、仲値前は円安ドル高の傾向が見られ、仲値後は円高ドル安に転じる傾向があります。

この現象は主にドル/円で顕著ですが、その影響は広範囲に及び、クロス円通貨やユーロ/ドルなどの主要通貨ペアでも同様の動きが確認されます。ここでは、

仲値に関するアノマリーと過去データによる分析を紹介します。

五十日(ごとび)現象

毎月の5日、10日、15日、20日、25日、30日など、5の倍数に日にちいわゆる五十日(ごとび)にあたる日は、企業の決済日となることが多く、このため仲値に向けた為替の動きが大きくなると言われています。

これらの日には輸入業者のドル買いが集中しやすく、円安ドル高の動きが顕著になるのが理由です。

 

過去のデータを用いて仲値前後の動きを詳細に分析すると、興味深いパターンが浮かび上がります。仲値前5分間(青色で表示)の動きを見ると、五十日(ごとび)の影響はそれほど顕著ではありませんが、25日に関しては大きな動きが観察されます。

また、8日から25日にかけて全体的な上昇傾向が見られます。

 

一方、仲値後(オレンジ色で表示)の動きを見ると、五十日(ごとび)の影響がはっきりと現れています。これは、仲値が決定された後に、市場参加者が五十日(ごとび)に特有の取引パターンに反応していることを示唆しています。

 

金曜日効果

金曜日には仲値前後の為替レートの変動が他の曜日に比べて激しくなる傾向があります。

 

この現象は「金曜日効果」として知られています。

金曜日効果が生じる主な理由として、週末を控えたリスク回避行動、トレーダーによる週末に向けたポジション調整、そして土日の支払期日が金曜日に前倒しされることによる取引の集中などが挙げられます。

これらの要因が重なり、金曜日の市場では他の曜日とは異なる動きが生じやすくなります。

 

過去のデータを分析すると、この金曜日効果の特徴がはっきりと現れています。

仲値前の5分間では、金曜日に他の曜日と比較して顕著なドル高の傾向が見られます。これは、週末前のリスク回避や支払いの前倒しによるドル需要の増加を反映している可能性があります。

 

一方、仲値後の5分間では、金曜日が最も大きく下落する傾向があります。

ただし、他の曜日も含めて全体的に下落傾向が見られます。これは、仲値決定後に一時的な調整が入る一般的な傾向に、金曜日特有の要因が加わった結果と考えられます。

 

この金曜日効果は、為替市場における重要なアノマリーの一つです。

トレーダーや投資家にとっては、この現象を理解し、適切に対応することが戦略上重要となります。

例えば、金曜日の取引では、通常以上に大きな価格変動に備える必要があるかもしれません。

 

仲値前後の為替動向とアノマリーの検証結果

為替市場における仲値前後の動きについて、詳細な分析を行った結果、いくつかの興味深いパターンが浮かび上がりました。

 

まず、全体的な傾向として、仲値前は円安ドル高、仲値後は円高ドル安になる傾向が確認されました。

これは、市場参加者の行動パターンや取引の集中が影響していると考えられます。

 

しかし、この傾向は時期によって変動があることも分かりました。

月初と月末は、その影響が安定せず、予測が難しくなっています。一方で、月の半ばになると、この傾向がより顕著に現れる傾向があります。

 

五十日(ごとび)現象については、仲値前は特に25日に大きな動きが見られ、仲値後は五十日全般にわたって影響が確認されました。

これは、企業の決済サイクルや市場参加者の行動パターンが反映されていると考えられます。

 

曜日効果、特に金曜日効果についても検証が行いました。

仲値前は、金曜日が他の曜日と比べて有意に大きな動きを示すことが確認できました。

これは、週末を控えたリスク調整や取引の集中が原因と推測されます。

一方、仲値後については、金曜日が最も大きな変動を示す傾向はあるものの、統計的な有意差は確認されませんでした。

 

これらの検証結果から、為替市場におけるアノマリー(異常性)の存在は確認されましたが、その影響力や一貫性については「半信半疑」と表現できるかもしれません。

 

今回の分析では仲値前後5分のデータに終点をあてましたが、実際にはこの傾向がより長時間にわたって観察できます。

平均的なドル円のターニングポイントは955、仲値時間ですので、この時間を重要な指標として意識することでより良いトレードができるかもしれません。

執筆者紹介

AMSER株式会社 代表取締役

林 貴晴

S&P500上場IQVIAやFTSE100上場のGSKなど、外資系製薬会社で活動後 投資系企業の株式会社ゴゴジャンで自動売買ソフトの開発能力とマーケティング手腕を評価され部長に抜擢、 その後複数社で役員を兼務
S&P500上場IQVIAやFTSE100上場のGSKなど、外資系製薬会社で活動後 投資系企業の株式会社ゴゴジャンで自動売買ソフトの開発能力とマーケティング手腕を評価され部長に抜擢、 その後複数社で役員を兼務

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