AMSER開発者林貴晴氏が教える|第2話:オセアニア通貨に有効な取引戦略とは
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オセアニアとは
オセアニアには、14の独立国と12の地域があり、広大な太平洋に点在しています。
主要な独立国としては、オーストラリアやニュージーランド、パプアニューギニア、フィジーなどが挙げられます。
フランス領ポリネシア、ニューカレドニア、
アメリカ領サモア、
イギリス領ピトケアン島などの海外領土もオセアニア地域に含まれます。
オセアニア通貨としては、主にオーストラリアドル(AUD)とニュージーランドドル(NZD)の2つが外国為替市場で取引されます。
オーストラリアとニュージーランドは日本との時差が比較的少ないため、東京市場と取引時間が重なることが多く、日本のトレーダーにとって取引しやすい市場です。
この記事では、オセアニア市場に焦点を当て、オーストラリアとニュージーランドの経済概要、通貨の特性、取引戦略について詳しく説明します。
オーストラリア
オーストラリアは、豊富な天然資源を持つ資源大国です。鉄鉱石、石炭、液化天然ガス(LNG)などの資源輸出が経済の大部分を占めており、特に中国をはじめとするアジア諸国への輸出が重要な収入源となっています。主要な輸出先である中国の経済成長や政策変更がオーストラリア経済に直接的な影響を与えるため、オーストラリアドル(AUD)は資源価格やアジア市場の動向に敏感です。
ニュージーランド
ニュージーランドは農業・畜産業が経済の主軸であり、乳製品、羊肉、果物などの輸出が経済の大部分を占めています。
特に乳製品は世界市場で大きなシェアを持ち、中国をはじめとするアジア諸国が主要な輸出先となっています。
ニュージーランドドル(NZD)は乳製品価格や中国経済の動向に敏感であり、農業関連の要因が為替レートに直接的な影響を与えます。
オーストラリアとニュージーランドの比較
オーストラリアとニュージーランドはともにイギリス国王チャールズ3世を君主として戴いています。
両国は立憲君主制の下で議会制民主主義を採用し、国王の代理としてそれぞれ総督が任命されます。
このような政治的な共通点がある一方で、経済規模や通貨発行量においては大きな差異が見られます。
オーストラリアとニュージーランドの経済規模や人口、マネーサプライの差は、外国為替市場で取引される両国の通貨ペア、AUD/NZDの為替レートにも影響を与えています。
オーストラリアはニュージーランドに比べてGDPや人口が数倍に上るため、AUD/NZDの為替レートは原則1を上回り、オーストラリアドルの方が高い価値を持ちます。
指標 | オーストラリア | ニュージーランド |
---|---|---|
君主 | チャールズ3世 | チャールズ3世 |
GDP | 1.55兆ドル(2022年) | 2,400億ドル(2022年) |
人口 | 約2,600万人(2023年) | 約520万人(2023年) |
通貨発行量 | 123.8憶AUD | 66.1憶NZD |
AUD/NZDの為替レート
レンジの形成
AUD/NZDの為替レートは過去10年1.03~1.15の範囲で変動しています。
また、長期的な平均レートは1.08~1.15の範囲で推移しています。
また、前述のようにオーストラリアの経済規模がニュージーランドを大きく上回るため、AUD/NZDの為替レートが1を下回ることは非常に稀です。
平均的な1日の動き
日本時間で見たAUD/NZDの平均的な動きです。
まず、ウェリントン市場(ニュージーランド)が始まりニュージーランドの指標発表が行われNZD主導で動きます。
次いでシドニー市場(オーストラリア)が開くと流動性が高まり、オーストラリアの指標発表が行われAUD主導に変わります。
AUD/NZDの価格変動の主な要因
AUD/NZD(オーストラリアドルとニュージーランドドルの通貨ペア)の価格変動は、両国の政策金利差や主要商品の価格動向、中国経済の状況によって大きく影響されます。
1. 政策金利
オーストラリア準備銀行(RBA)とニュージーランド準備銀行(RBNZ)の政策金利差がAUD/NZDの動向に直結します。
オーストラリアの政策金利が上昇する場合、AUD/NZDは上昇する傾向があり、逆にニュージーランドの政策金利が上昇するとAUD/NZDは下落する傾向があります。
2. 商品価格
オーストラリアの鉄鉱石、石炭、LNG(液化天然ガス)は主要な輸出品であり、これらの価格が上昇すればAUD/NZDは上昇し、下落すればAUD/NZDも下落します。
同様に、ニュージーランドの乳製品(特にGDT乳製品価格指数)や羊肉の価格が上昇すればAUD/NZDは下落し、価格が下落すればAUD/NZDは上昇する傾向にあります。
3. 中国経済
中国経済はオーストラリアとニュージーランドの主要輸出先であり、特に製造業PMIやGDPなどの経済指標の変動がAUD/NZDに影響を与えます。
中国経済が好調な場合、オーストラリアとニュージーランドの商品需要が高まり、AUD/NZDは上昇する傾向があります。逆に中国経済が減速すると、AUD/NZDは下落する傾向があります。
内容 | AUD/NZDの動き |
---|---|
オーストラリア(RBA)政策金利上昇 | 上昇 |
ニュージーランド(RBNZ)政策金利上昇 | 下落 |
ニュージーランド(RBNZ)政策金利上昇 | 下落 |
鉄鉱石価格の上昇 | 上昇 |
石炭価格の上昇 | 上昇 |
LNG価格の上昇 | 上昇 |
乳製品(GDT乳製品価格指数)上昇 | 下落 |
羊肉価格の上昇 | 下落 |
中国経済(中国GDP、PMI)の好転 | 上昇 |
AUD/NZDの取引戦略
レンジ戦略
AUD/NZDはオーストラリアとニュージーランドの経済的関連性と規模の違いから、1.03~1.15の範囲内で安定的に推移する傾向があります。
過去10年間で見ると、この範囲内での取引が大半を占めるため、レンジ相場での取引戦略が非常に有効です。
1.03~1.05をサポートラインと想定しこの付近でのロングポジションや1.10~1.15をレジスタンスラインとしてのショートポジションは有効な戦略です。
また、レンジ幅が決まっているために資金管理においても決定しやすくなります。
AUD/NZDのキャリートレード戦略
キャリートレード戦略は、低金利通貨で借りた資金を高金利通貨で運用することによって金利差(スワップポイント)を得る取引です。
AUDとNZDはどちらも主要先進国の中で高金利通貨ですが、過去10年はニュージーランドの政策金利がオーストラリアより高い傾向にあるため、通常NZDに対するAUDの売りでキャリートレードが行われます。
レンジ幅がある程度想定できるために、グリッドトレードを組み合わせることも有効な手法です。
政策金利差戦略
オーストラリアとニュージーランドの政策金利差はAUD/NZDの動向に影響します。
オーストラリア準備銀行(RBA)とニュージーランド準備銀行(RBNZ)の声明や経済データの変化により政策金利差が変動するため、両国の中央銀行政策に注目した戦略が有効です。
オーストラリアの金利が上昇すると見込まれる場合にはAUD/NZDのロングポジションを取り、ニュージーランドの金利が上昇すると見込まれる場合にはAUD/NZDのショートポジションを取ります。また、中央銀行の声明や経済指標発表前後のボラティリティに注意する必要があります。
執筆者紹介
AMSER株式会社 代表取締役
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