AMSER開発者林貴晴氏が教える|第7話:データから見るS&P500とアノマリー
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S&P500
S&P500(Standard & Poor's 500)は、アメリカの株式市場を代表する株価指数です。時価総額が大きい上位500銘柄で構成されており、1957年に導入されて以来、長きにわたってアメリカ株式市場のベンチマークとしての重要な役割を果たしてきました。
※TradingView参照
この指数は500銘柄を組み入れているため、特定の業種や個別銘柄への過度な集中を避けることができます。
さらに、構成銘柄の入れ替えが行われるため、時間の経過とともに構成銘柄が進化し、新たな有力企業が反映されていきます。
個別銘柄への投資に比べ、S&P500への投資はリスクが低くなる傾向にあります。これは分散投資のメリットによるものです。
長期的に見ると、S&P500は力強い値上がり傾向を示してきました。過去の実績から、長期保有は資金を育てる良い選択肢であることがうかがえます。
個人投資家が実際に500種類の個別銘柄を購入するのは現実的ではありません。
そのため、一般的にはS&P500に連動したETF(上場投資信託)やCFD(株価指数証拠金取引)を利用します。
CFDはMT4(MetaTrader 4)やMT5(MetaTrader 5)などのプラットフォームで提供されているため、自動売買の実行が可能です。
株式は長期的には値上がりが前提とされるため、自動売買の戦略を立てやすいという利点があります。
アノマリー
アノマリー(anomaly)とは、一般に「異常」や「例外」を意味する言葉です。
金融市場においては、効率的市場仮説に反する合理的な説明がつかない市場の価格パターンや傾向を指します。
例えば、特定の曜日や月に株価が有意に変動する「ウィークエンド効果」「月次効果」などがこれにあたります。
ここでは、有名なアノマリーである「Sell in May」「ハロウィン効果」「サンタクロスラリー」「4月の上げ相場」について、過去のデータを基に検証します。
Sell in May / ハロウィン効果(Halloween Effect)
「Sell in May」は、5月1日から10月31日までの間、株式市場が不調になりやすいため、この期間はポジションを持たないほうが無難であるという古くからの投資の格言です。
元々は英国で「Sell in May, and go away, don't come back until St Leger day(9月中頃に行われる伝統の競馬祭典)」という言い回しでした。
一方で、11月1日から翌年の4月30日までは株価が上がるので積極的に買った方がいいという「ハロウィン効果」があります。
実際に2003年から2023年までのS&P500の過去データを月別に平均を出すと、「Sell in May」の期間にあたる5月から10月の月別の平均成長率は0.53%、一方それ以外の期間「ハロウィン効果」にあたる11月から4月の平均成長率は1.03%で2倍近い開きがあります。
このことから「Sell in May」と「ハロウィン効果」はそれなりにあたっているようです。
ただし、「Sell in May」の期間もプラス成長しているので、必ずしもポジションを閉じる必要はないかもしれません。
サンタクロスラリー
サンタクロスラリーとは、クリスマスの時期に株価が上昇する傾向のことを指します。
一般的に「サンタクロスラリー」の期間は、Christmas Eve(クリスマス・イブ)の前週の月曜日から、新年の最初の5取引日までと定義されています。
この現象の正確な理由は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が考えられています。
まず、クリスマス時期は機関投資家や個人投資家が休暇を取る時期であり、売り注文が減少することで株価が上昇しやすくなります。
また、年末年始は個人投資家が投資を始める季節でもあり、新規資金の流入が株価上昇を後押しすることがあります。
さらに、クリスマス商戦で好調な業績が予想される小売り関連企業の株価が上昇することで、市場全体の上げ潮流が生まれやすくなります。
良い業績が期待されれば、投資家の買い注文が増えるためです。
実際に、過去のデータを分析すると、サンタクロスラリー期間全体の平均成長率は0.024%と、全データの平均成長率0.045%を下回っています。
このことから、このアノマリーの存在は必ずしも正しくないと言えます。
しかし、クリスマスイブの前4日間(12月20日~23日)とクリスマス後の12月26日、27日は、有意に成長率が高い結果が出ています。
つまり、この期間に限定するとサンタクロスラリーは存在する可能性があります。
4月の上げ相場(April Strength)
「4月の上げ相場」は、株式市場のアノマリーの一つで、4月が株式市場にとって比較的強い月であるという傾向を指します。この現象は特に米国の株式市場で観察されています。
理由としては、アメリカの株式会社は年4回決算報告があり、4月は多くの企業が四半期の決算を発表する時期です。
年初から3月までの業績が好調であれば、市場全体に対する投資家の信頼感が高まり、株価が上昇する傾向があります。
また、米国では4月15日が個人の税申告期限で、これに伴い税金対策のための売却が終了し、再び株式に資金が戻ることが多く、市場の上昇を助ける要因となります。
実際に過去データを検証すると、1年間のS&P500の月別平均成長率は0.89%ですが、4月だけを見ると1.95%と倍以上の値になっています。
また、4月を年別に見ると8割以上の月がプラス成長をしているため、「4月の上げ相場」は信憑性がありそうです。
米国株式投資における「アノマリー」は、合理的な説明がつかない不思議な現象を指します。
しかし、これらの現象を理解し上手く活用することで、投資のパフォーマンスを向上させる可能性があります。
「Sell in May」や「ハロウィン効果」は長年にわたり観察されてきた株価の季節性です。
この傾向を認識しておけば、ポジションの構築や手仕舞いのタイミングを適切に判断できるでしょう。
ただし、これらの格言は必ずしも絶対的なものではありません。市場環境や個別銘柄の状況によっては例外もあり得ます。
一方、「4月の上げ相場」は、企業決算と個人の税申告に関連した要因によるものと考えられています。
この時期は好材料が重なるため、積極的な買い場面をむかえるかもしれません。
こうしたアノマリーの存在は、市場が完全に効率的ではないことを示唆しています。
投資家は冷静に分析を重ね、アノマリーを機会と捉えることができれば、リターンの向上につなげられるかもしれません。
しかし、盲目的に従うのではなく、自分なりの投資哲学と戦略を持つことが肝心です。
アノマリーは一つの視点に過ぎず、様々な要因を総合的に勘案することが重要なのです。
執筆者紹介
AMSER株式会社 代表取締役
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